車いすで家の中を動くには?
通路の幅・出入口・段差の見直し方
退院して、車いすで家に戻ることになった。そんなとき、ご家族がまず気になるのは「今の家で、車いすで動けるだろうか」ということではないでしょうか。
この記事では、車いすで家の中を動くときに困りやすいところと、通路や出入口の幅の目安を、国の指針をもとに紹介します。介護保険の住宅改修(介護保険を使った住まいの工事)でできることや、車いすを借りるしくみもまとめました。車いすの種類や体の状態に合わせた選び方は、医師やケアマネジャー、福祉用具の専門の相談員にご相談ください。
車いすで家の中を動くときに困りやすいところ
車いすで暮らし始めると、歩いていたときには気にならなかった所が、通りにくく感じることがあります。よくあるのは、次のような所です。
- 廊下や部屋の出入口の幅がせまく、車いすが通らない
- 廊下の曲がり角で、向きを変えにくい
- 敷居などの小さな段差で、車輪が引っかかる
- 開き戸を開け閉めするとき、車いすを前後に動かさないといけない
- 玄関の上がりかまち(玄関の段差)や、玄関の外の段差を越えられない
沖縄の家には、気候から生まれた段差もあります。沖縄県の手引書では、台風の多い沖縄では、玄関に雨水を入れないように、玄関と外のあいだに段差を付けるのが一般的だと紹介されています。トイレを水で洗う習慣から、廊下より床を低くしたトイレが多いことも書かれています。
同じ手引書では、車いすを使う家の工夫として、次のような例が挙げられています。
- 車いすを使うなら、廊下に背の高い幅木(壁のいちばん下に付ける板)を付ける
- 玄関の入口は引き戸にして、出入口の幅にゆとりをとる。外出用の車いすを置く場所も考える
- 駐車場に屋根があると、車いすへの乗り換えや傘をさすときに便利
通路と出入口の幅の目安(国の指針)
国土交通省の「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」は、年を重ねても住み続けられる家の目安を示したものです。介助が必要になったときに、介助用の車いすで暮らせることも考えて作られています。
指針には、どの家にも勧める「基本レベル」と、さらに配慮した「推奨レベル」があります。ふだん暮らす場所の通路と出入口の幅は、次のとおりです。
| 場所 | 基本レベル | 推奨レベル |
|---|---|---|
| 通路 | 780mm以上(柱の所は750mm) | 850mm以上(柱の所は800mm) |
| 出入口 | 750mm以上(浴室は600mm) | 800mm以上 |

ここでいう幅は、実際に通れる幅のことです。たとえば玄関や浴室の出入口は、開き戸なら扉の厚み、引き戸なら開けたときに残る扉の分を除いて考えます。
段差については、ふだん暮らす場所の床は「段差のない構造(5mm以下)」が基本とされています。ただし、玄関の上がりかまちなど、段差が残ってもよい場所も示されています。
この指針は、家を設計するときの目安です。守らないといけない決まりではありません。今の家がこの数字に届かなくても、どこを優先して直すかを考える手がかりになります。
介護保険の住宅改修でできること(段差・扉・手すり)
要支援・要介護の認定を受けている方は、介護保険の住宅改修を使えます。対象になる工事費は20万円までで、自己負担は1〜3割です。工事の前に、市町村への申請が必要です。
車いすで動きやすくするための工事では、たとえば次のようなものが対象になります(厚生労働省の通知による)。

段差をなくす
敷居を低くする工事や、スロープを付ける工事、浴室の床のかさ上げなどです。玄関から道路までの通路の段差も対象になります。スロープに付ける、転落や脱輪を防ぐ柵や立ち上がりも、あわせて対象です。くわしくは「スロープを付けるには?」と「部屋の出入口の小さな段差はどうなくす?」をご覧ください。
扉を替える
開き戸を引き戸・折戸・アコーディオンカーテンなどに替える工事です。扉を外す、ドアノブを変える、戸車を付ける工事も含まれます。沖縄市の手引き(令和7年7月)では、トイレの間口がせまく、車いすで動くのが難しいときに、体の状態にもとづく理由があれば、間口を広げる工事も対象としています。扉の工事は「開き戸を引き戸にかえるには?」でも紹介しています。
手すりを付ける・床を替える
車いすから立ち上がるときや、乗り移るときに支えになる手すりも対象です。畳の部屋を板の床などにかえて、車いすで動きやすくする工事も、床材の変更として対象になります。
※ 住宅改修は、工事を始める前に市町村への申請が必要です。申請の前に工事を始めると、介護保険から支給されないことがあります。
一方で、廊下そのものを広げる工事は、住宅改修の6つの種類に入っていません。国の通知では、増築で廊下を広げるのにあわせて手すりを付けるときは、手すりの分だけが対象になり得るとしています。
ご自分の場合の支給額の目安は支給額チェックで、介護保険で使える工事はできる工事で確かめられます。
車いすを借りるしくみ(福祉用具の貸与)
車いすは、介護保険の「福祉用具貸与」で借りられます。借りるときの自己負担は、費用の1割(所得によって2割か3割)です。車いすの付属品(クッションなど)も対象です。
ただし、要支援1・2と要介護1の方は、車いすは原則として対象外です。体の状態によっては、例外として借りられる場合があります。ケアマネジャーにご相談ください。
工事をせずに置いて使うスロープも、福祉用具貸与の対象です(敷居などの小さな段差に使う固定用のスロープは、買うこともできます)。工事でスロープを付けるか、置くスロープを借りるかは、家の段差の高さや使い方に合わせて決めます。福祉用具を借りるしくみは「介護保険で借りられる福祉用具は?」で紹介しています。
まず家の中の幅と段差を一緒に測ってみる
工事を考える前に、ご家族で家の中を見てみましょう。次の順番で進めると、相談するときに話がまとまります。
- ふだん通る道を決める(寝室からトイレ、洗面所、玄関など)
- その道の通路と出入口の幅を測る
- 段差の高さを測る(敷居・玄関・トイレや浴室の出入口)
- 曲がり角や、開き戸の開く向きを確かめる
那覇市の手引き(令和4年12月改定)では、工事の前の申請に使う図面に段差の高さを書くよう求めています。段差をなくす工事では、段差に測る道具を当てた写真も出します。測った数字は、申請のときにも役に立ちます。
※ 窓口や書類は変わることがあります。お住まいの市町村の窓口か、ケアマネジャーに確かめてください。
かなさホームでは、介護福祉士と福祉住環境コーディネーターの資格を持つ担当が、車いすでの動き方をうかがいながら、どこを直すとよいかを一緒に考えます。現地調査とお見積りは無料です。沖縄本島に対応しています(離島はご相談ください)。ご相談はお問い合わせからどうぞ。
よくある質問
答え:借りられます。ただし、要支援1・2と要介護1の方は、車いすは原則として対象外です。体の状態によっては例外として借りられる場合があるので、ケアマネジャーにご相談ください。
答え:廊下を広げる工事そのものは、住宅改修の種類に入っていません。増築で廊下を広げるのにあわせて手すりを付けるときは、手すりの分だけが対象になり得ます。工事の前に、ケアマネジャーと市町村に確かめてください。
答え:工事でスロープを付けるのは、介護保険の住宅改修の「段差の解消」の対象です。工事をせずに置いて使うスロープは、福祉用具の貸与の対象です。段差の高さや使い方に合わせて選びます。
参考にした情報
- 高齢者が居住する住宅の設計に係る指針(平成13年国土交通省告示第1301号)(新しいタブで開きます)
- 介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて(老企第34号)(新しいタブで開きます)
- 居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について(老企第42号)(新しいタブで開きます)
- どんなサービスがあるの? – 福祉用具貸与(新しいタブで開きます)
- 要支援・要介護1の者に対する福祉用具貸与について(新しいタブで開きます)
- 『風土に根ざした家づくり手引書』(令和4年度版)第2章(新しいタブで開きます)
- 介護保険住宅改修費支給申請の手引き(令和4年12月改定)(新しいタブで開きます)
- 介護保険の住宅改修費支給申請について(令和7年7月)(新しいタブで開きます)