部屋の出入口の小さな段差はどうなくす?
敷居の工事とスロープ
部屋と部屋のあいだや、廊下から部屋に入る所にある敷居(部屋の境目に入れる横木)。慣れた家でも、足が上がりにくくなると、小さな段差につまずくことがあります。
この記事では、ご家族に向けて、部屋の出入口の小さな段差をなくす方法を紹介します。介護保険の住宅改修(介護保険を使った住まいの工事)でできる敷居の工事と、置いて使うスロープ(福祉用具)の違いを、厚生労働省や那覇市などの資料をもとにまとめました。
1〜2センチの段差でもつまずきやすい
政府広報オンラインでは、家の中で転びやすい場所として居間を挙げ、1センチメートルから2センチメートルの段差はつまずきやすいので、スロープか手すりを付けるよう勧めています。床に物を置かないことや、電気のコードを歩く所からよけることも、あわせて紹介されています。
消費者庁の資料(令和2年)では、65歳以上の方が自宅で転んだ事故の状況として、「すべる」と並んで「つまずく」がいちばん多くなっていました。事例には、廊下から段差を降りるときに、サッシに引っかかって転んだものもあります。
国土交通省の「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」では、ふだん暮らす所の床を「段差のない構造」にすることが示されています。この「段差のない構造」には、5ミリメートル以下の段差も含みます。つまり、5ミリメートルをこえる段差は、指針では「段差」として扱います。玄関や浴室の出入口などの決まった所を除いて、ふだん暮らす部屋や廊下の床には段差を作らない、というのが指針の基本の考え方です。沖縄県の『風土に根ざした家づくり手引書』でも、廊下やリビングに不用意な段差を設けないこと、寝室の入口を引き戸にして段差を設けないことを挙げています。
敷居を低くする・取る工事(段差の解消)
部屋の出入口の段差は、介護保険の住宅改修の「段差の解消」で、工事をしてなくすことができます。厚生労働省の通知では、段差の解消の例として、敷居を低くする工事、スロープを設置する工事、浴室の床のかさ上げが挙げられています。

那覇市の手引き(令和4年12月改定)では、対象になる工事の例として、次のものを挙げています。
- 部屋と部屋のあいだの敷居を低くする工事、取り除く工事
- 敷居にスロープを固定して付ける工事
どの方法が合うかは、床の作りや扉の種類、段差の高さで変わります。現地で見てから決めます。
敷居の工事にあわせて、引き戸に戸車を付けたり、開き戸を引き戸にかえたりする工事は、「引き戸などへの扉の取替え」として対象になる例です(那覇市の手引き)。
一方で、スロープや踏み台を固定せずに置くだけのものは、住宅改修の対象外です。沖縄市の案内(令和7年7月)でも、固定しないスロープや踏み台は対象外としています。
※ 住宅改修は、工事の前に市町村への申請が必要です。申請の前に工事を始めると、支給されないことがあります。
敷居に固定するスロープと、置くスロープ
段差に付けるスロープには、工事で固定するものと、置いて使うものがあります。

敷居に固定するスロープは、住宅改修の工事です。置いて使うスロープは、福祉用具の扱いで、借りる(貸与)か買う(購入)ことになります。厚生労働省の通知では、取り付けに工事がいるスロープは貸与から除かれ、反対に、貸与のスロープを置くだけの段差の解消は、住宅改修から除かれています。
令和6年4月からは、敷居などの小さい段差に使うスロープの一部が、借りるか買うかを選べるようになりました(選択制)。対象は「固定用スロープ」で、主に敷居などの小さい段差に使い、たびたび持ち運ぶ必要のないものをいいます。設置や撤去、持ち運びができる「可搬型」は除かれます。名前に「固定」とありますが、工事で取り付けるものではなく、置いたまま使う福祉用具です。
スロープは、要支援1・2と要介護1の方も借りられる種目です。借りる場合は、ほかの介護サービスと合わせて、要介護度ごとの1か月に使える額の中で借ります。借りるか買うかは、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員の説明を聞いて、本人や家族が選びます。買う場合は、同じ年度に購入できるのは10万円までです(介護サービス情報公表システムの説明)。
床の高さをそろえるときの付帯工事
敷居を取って床の高さをそろえるときなどは、主な工事のために、ほかの工事がいることがあります。こうした工事は「付帯工事」として、住宅改修の対象になります。厚生労働省の通知では、たとえば次のようなものが挙げられています。
- 床材の変更のための、下地の補修や根太(床を支える横木)の補強
- 扉の取替えにともなう、壁や柱の工事
- 浴室の床の段差の解消にともなう、給排水設備の工事
畳の部屋の出入口では、畳を板の床やビニル系の床にかえる工事も、住宅改修の「床や通路の材料の変更」の対象です。沖縄県介護保険広域連合の手引きに載っている厚生労働省のQ&Aでは、体の状態や住まいの状況から必要と認められれば、畳から転んだときの衝撃をやわらげる畳への変更なども認められるとしています。ただし、古くなったり傷んだりしたことが理由の床の張りかえは、対象になりません(那覇市の手引き)。
よく通る出入口から見てもらう
段差の工事は、ふだんよく通る出入口から考えるのが基本です。沖縄市の案内では、将来の体の状態の変化も考えに入れて、必要な所に絞って工事をするよう求めています。たとえば、次のような所に段差がないか、まず確かめてみてください。
- 寝室からトイレまでの道筋
- 居間と台所のあいだ
- 廊下と和室のあいだ
夜に通る所は、段差が見えにくくなります。政府広報オンラインでは、足元がよく見えるように照明を明るくすることも勧めています。沖縄県の『風土に根ざした家づくり手引書』でも、廊下に足元灯を付けることを挙げています。
申請のときは、段差の高さが分かるようにします。那覇市の手引きでは、段差の工事の写真は、段差に測る道具を当てて高さが分かるように撮り、平面図にも段差の高さを書くよう求めています。写真は、まわりの壁や床も見えるように、広めに撮ります。
かなさホームでは、介護福祉士と福祉住環境コーディネーターの資格を持つ担当が、家の中を一緒に歩いて、段差の高さや通る道筋を確かめます。現地調査とお見積りは無料です。介護保険でできる工事はできる工事で紹介しています。ご相談はお問い合わせからどうぞ。工事のいらない転倒予防の工夫は「家の中で転ばないために、今日からできることは?」で紹介しています。
よくある質問
答え:那覇市の手引きでは、敷居にスロープを固定して付ける工事を、住宅改修の対象になる例として挙げています。置くだけのスロープは、住宅改修の対象になりません。工事の前に、市町村への申請が必要です。
答え:置いて使うスロープは、福祉用具の貸与で借りられます。敷居などの小さい段差に使う固定用スロープは、令和6年4月から、借りるか買うかを選べるようになりました。どちらがよいかは、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談してください。
答え:国土交通省の指針では、5ミリメートル以下の段差は「段差のない構造」に含むとしています。玄関の上がりかまちなど、指針で段差を認めている所もあります。部屋の出入口の段差が気になるときは、高さを測ってみてください。
参考にした情報
- たった一度の転倒で寝たきりになることも。転倒事故の起こりやすい箇所は?(新しいタブで開きます)
- 10月10日は「転倒予防の日」、高齢者の転倒事故に注意しましょう!(令和2年10月8日)(新しいタブで開きます)
- 高齢者が居住する住宅の設計に係る指針(平成13年国土交通省告示第1301号)(新しいタブで開きます)
- 『風土に根ざした家づくり手引書』(令和4年度版)第2章(新しいタブで開きます)
- どんなサービスがあるの? – 福祉用具貸与(新しいタブで開きます)
- 介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて(老企第34号)(新しいタブで開きます)
- 福祉用具貸与と特定福祉用具販売の選択制について(選択制の対象とする種目に関する解釈)(新しいタブで開きます)
- どんなサービスがあるの? – 特定福祉用具販売(新しいタブで開きます)
- 介護保険住宅改修費支給申請の手引き(令和4年12月改定)(新しいタブで開きます)
- 介護保険の住宅改修費支給申請について(令和7年7月)(新しいタブで開きます)
- 介護保険 住宅改修の手引き(令和7年4月改正)(新しいタブで開きます)