アパートや賃貸マンションの外壁・屋上は、年数とともに必ず傷みます。傷んでから慌てて直すと、工事の費用だけでなく、入居者の暮らしや家賃の収入にも影響が出ることがあります。
この記事では、アパート・賃貸マンションのオーナーと管理会社の方に向けて、修繕の時期を前もって決めておく「計画修繕」の考え方と、外壁・屋上・鉄部の修繕の周期の目安、入居者へのお知らせ、修繕の資金と記録の残し方を、国土交通省のガイドブックと沖縄県の手引書をもとに紹介します。
計画修繕とは:壊れてから直すのではなく、時期を決めて直す
国土交通省の『賃貸住宅管理業者向け 計画修繕ガイドブック』では、「計画修繕」を、修繕を計画的・予防的に行うことと説明しています。計画的とは修繕の時期を前もって予定しておくこと、予防的とは壊れる前に修繕することです。修繕の責任は、建物の持ち主であるオーナーにあります。
ガイドブックによると、修繕をせずに傷みを放っておくと、物件の魅力が下がって入居率が下がり、家賃の収入が減って修繕の資金が足りなくなる、という悪い循環に陥るおそれがあります。たとえば外壁が壊れて雨水が部屋に入ると、修繕のあいだ入居者に一時的に退去してもらい、宿泊費や、ぬれた持ち物の補償などを負担することになりかねません。計画修繕で外壁や屋根を塗り直しておけば、こうした工事費以外の負担は避けられる、としています。
ガイドブックで紹介されている国土交通省の調査(令和5年3月)では、計画修繕をしたことのあるオーナーの約3割が「高い入居率を確保できた」「家賃水準を維持できた」と答えています。
計画修繕の6つの手順
ガイドブックでは、計画修繕を、次の6つの手順で進めることにしています。

- 計画:長期修繕計画をつくり、修繕する所ごとに、予定の年と費用の目安を決めます
- 点検:予定の時期が近づいたら建物の状態を目で見て確かめ、写真に残します。傷みがひどいときは、建築士などの専門家に診断を頼みます
- 検討と調整:予定どおり直すか、先に延ばすかを決め、時期・場所・資金を調整します
- 実施:工事の会社を選んで発注し、入居者などに知らせて工事をします
- 記録:工事の内容を記録し、履歴に残します
- 計画の見直し:工事のあとや、工事を先に延ばしたときは、その後の予定の年と費用の目安を直します
長期修繕計画をつくるときは、まず、新築のときの工事会社や建築士、前のオーナーなどから受け取った計画がないかを確かめます。計画の期間について、ガイドブックは、分譲マンションでは30年以上で大規模な修繕を2回以上含む計画が一般的になっていることを紹介し、賃貸住宅でもこれを参考に、経営や融資の期間などの事情をふまえてつくることが望ましいとしています。
点検の目安として、ガイドブックは国土交通省のウェブサイトにある「賃貸住宅の修繕・点検時期セルフチェック」も勧めています。
外壁・屋上・鉄部の修繕の周期の目安
ガイドブックには、国土交通省の『長期修繕計画作成ガイドライン』の例をもとにした修繕の周期の表があります。外壁の塗装の塗り替えと、屋根の防水の補修・修繕は12〜15年、鉄部の塗装は5〜7年です。屋根の防水は、24〜30年で撤去して新しくする例も示されています。この表は、一般的な中高層のマンションを想定したものです。

沖縄県の『風土に根ざした家づくり手引書』の点検と補修の目安では、次のようになっています。
| 部分 | 沖縄県の手引書の目安 |
|---|---|
| 外壁の塗装 | 10〜15年くらいで全面補修を検討 |
| 屋上の防水(防水層が表に出ている) | 5〜7年ごとにトップコートの塗り替え、12〜15年くらいで防水層の補修を検討 |
| ベランダの鉄部 | 3〜5年ごとに塗り替え |
手引書は、足場を組む必要があるときは、屋上の防水を外壁の補修と同時に行うことも検討するよう勧めています。工事をまとめる考え方は「外壁と屋根・屋上の工事は一緒にしたほうがいい?」、足場の役割は「外壁塗装の足場はなぜ必要?」で紹介しています。ガイドブックも、修繕の周期は材料の耐用年数や仕様、立地の条件で変わるとしていて、予定の年は1つの年に決めず、「何年目から何年目まで」のように幅で決めてよいとしています。
工事の前に、入居者と近隣へ知らせる
ガイドブックでは、工事の前の早い段階で入居者に工事のお知らせをし、近隣にも適切な時期と方法で知らせる必要があるとしています。お知らせは工事の会社が行うのが一般的ですが、入居者から管理会社に問い合わせが来ることもあるため、管理会社も工事の期間や時間帯を把握しておくことが求められます。
外壁の塗装では、足場を組む日の音や、洗濯物を外に干せない日、通路が通れない時間など、入居者の暮らしに関わることがあります。いつ・何があるかを、入居者に前もって知らせておきましょう。
修繕の資金を準備し、記録を残す
ガイドブックは、将来の修繕の資金を、家賃の収入から一定の額ずつ積み立てておくことが、最も確実な方法だとしています。長期修繕計画の期間の修繕費の合計を、月数で割った額が積み立ての目安です。積み立ての方法として、積立型の金融商品、賃貸住宅修繕共済、修繕の資金の信託が紹介されています。手元の資金で足りないときは、住宅金融支援機構や民間の金融機関の賃貸住宅向けのリフォーム融資を使う方法もあります。
修繕の記録も大切です。ガイドブックでは、少なくとも「修繕の時期」「工事の内容」「金額」「工事の会社の名前」の4つを記録しておくことを勧めています。履歴があれば、次の点検のときに必要な工事を正確に考えられ、むだな費用を省くことにつながります。入居を考えている方から修繕の状況を聞かれたときにも答えられます。アパートの外階段や共用廊下の床の点検は「アパートの外階段・共用廊下の床の防水」で紹介しています。
調査から工事・報告まで相談する
計画修繕は、長期修繕計画で時期と費用の目安を決め、点検で状態を確かめながら、工事・記録・見直しをくり返していくものです。外壁・屋上・鉄部の周期を目安に、建物の状態に合わせて時期を調整しましょう。
TRUSS では、管理会社・物件オーナーのご依頼に、現地調査・お見積り・工程管理・入居者への案内・写真での報告・完工報告まで一括で対応します。劣化の状態を緊急度ごとにまとめた写真付きの報告書や、予算と時期に合わせた年度ごとの修繕の計画もご提案します。くわしくは法人・管理会社・物件オーナーの方へをご覧ください。ご相談は法人向けのお問い合わせから。料金の考え方は料金の目安でご覧いただけます。現地調査とお見積りは無料です。
よくある質問
はい、住みながら工事ができます。足場とネットで建物を囲むため、工事の間は窓を開けにくい日があります。国土交通省のガイドブックも、工事の前の早い段階で入居者にお知らせすることを求めています。TRUSS では、工事のご案内や掲示物、洗濯物を干せない日などのお知らせを用意します。
周期は目安です。国土交通省のガイドブックでは、予定の時期が近づいたら点検し、状態が良ければ先に延ばす、傷みが進んでいれば早めるなど、オーナーと相談して決めることにしています。時期を変えたときは、長期修繕計画もあわせて見直します。
住宅瑕疵担保責任保険協会によると、リフォームや大規模修繕の工事には、新築住宅のような長い保証の義務がありません。そこで、工事の欠陥に対する工事会社の保証をしやすくするための「リフォームかし保険」と「大規模修繕工事かし保険」があります。延床面積500㎡未満かつ3階建て以下の共同住宅はリフォームかし保険、それより大きい共同住宅の共用部分の工事は大規模修繕工事かし保険の対象です。どちらも、工事の検査に合格することが条件です。