浴室の出入口の段差をなくすには?
床のかさ上げ・浴槽の取替えと介護保険
脱衣所から浴室に入るときの段差や、浴槽をまたぐ高さ。入浴の介助で「ここが心配」と感じる場面は多いと思います。消費者庁の資料でも、65歳以上の方が自宅で転んだ事故の場所で、いちばん多かったのは浴室・脱衣所でした。
この記事は、ケアマネジャーさまやご家族に向けて、浴室の出入口の段差をなくす方法を紹介します。国の指針の目安、介護保険の住宅改修でできる工事、福祉用具のすのことの違いを、厚生労働省と沖縄の市町村の資料をもとにまとめました。
浴室の出入口の段差と、国の指針の目安
政府広報オンラインでは、浴室の入口の段差が高いときは、すのこやスロープで段差を小さくすることを勧めています。すべりにくい床にすることや、手すりを付けることも、あわせて紹介されています。
国土交通省の「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」には、浴室の出入口の段差について、次の2つの形が示されています。どちらかにするのが「基本レベル」の目安です。
- 20ミリメートル以下の単純段差(立ち上がりが1つだけの段差)にする
- 浴室の内と外の高さの差を120ミリメートル以下、またぐ高さを180ミリメートル以下にして、手すりを付ける
もう一段上の「推奨レベル」では、浴室の出入口にも段差を設けないこと(5ミリメートル以下の段差は、段差なしに含む)が示されています。同じ指針では、浴室の出入口の幅は600ミリメートル以上が、基本レベルの目安です。

指針は、家を設計するときに気をつけることを示したものです。今の家を、この数字に合わせなければならない決まりではありません。それでも、どこまで段差を小さくするかを考えるときの目安になります。
2つ目の形のように段差を残すときは、手すりを付けることが前提です。手すりの取付けも住宅改修の対象で、手すりを付けるための壁の下地の補強は付帯工事になります(厚生労働省の通知)。
床のかさ上げと、あわせて必要になる工事
介護保険の住宅改修(介護保険を使った住まいの工事)では、浴室の出入口の段差をなくす工事は「段差の解消」に入ります。厚生労働省の通知では、段差の解消の例として、浴室の床のかさ上げが挙げられています。
浴室の床を上げると、ほかの所にも工事が要ることがあります。次のような工事は、付帯工事(主な工事のために必要になる工事)として扱われます。
- 床のかさ上げにともなう、給排水設備の工事
- 蛇口の下に洗面器が入らなくなったときの、蛇口の位置の変更
- 床が上がって浴槽が深くなったときの、浴槽のかさ上げや取替え
1つ目は厚生労働省の通知に、あとの2つは沖縄県介護保険広域連合の手引き(令和7年4月改正)に載っている厚生労働省のQ&Aの例です。那覇市の手引き(令和4年12月改定)でも、床の段差の解消にともなう給排水設備の工事や器具の高さの調整を、対象の例にしています。一方で、床の工事をしない器具の高さの調整だけの工事や、洗面器などの器具の買い替えは、対象にならない例です。
沖縄県の『風土に根ざした家づくり手引書』では、浴室で排水の溝(グレーチング)などを使って段差をなくす方法が紹介されています。どの方法が合うかは、浴室の作りによって変わります。床をすべりにくい材料にかえる工事も、住宅改修の対象です。
浴槽をまたぎやすくする・浴槽をなくす
浴室の出入口だけでなく、浴槽のふちも「段差」にあたります。沖縄県介護保険広域連合の手引きに載っている厚生労働省のQ&Aでは、浴槽のふちも、玄関の上がりかまち(玄関の段差)と同じように段差に含めてよいとしています。入浴しやすい深さやふちの高さにするための浴槽の取替えも、「段差の解消」として扱えます。
市町村の手引きにも、例が載っています。
- 那覇市:浴槽をまたぎやすいものに取り換える工事は対象。浴槽をなくすと入浴の動きが楽になる場合は、浴槽の撤去も対象
- 沖縄市(令和7年7月の案内):浴室が狭くて浴槽を撤去したいときは、浴室の広さや介助の状況を見て、入浴のときに浴槽が支障になっているなら「段差の解消」として対象
ただし、古くなったことが理由の取替えは、対象になりません。沖縄市の案内でも、補修や古くなったための交換を目的にした工事は対象外としています。
※ 対象になるかどうかは、保険者である市町村が決めます。工事の前に市町村へ申請し、確認を受けてから工事を始めてください。
すのこを置く方法は、福祉用具の購入
浴室の床に置いて段差を小さくする「浴室内すのこ」は、住宅改修ではなく、福祉用具の購入の対象です。厚生労働省の通知では、浴室内すのこを置いて段差をなくすことは、住宅改修の「段差の解消」から除かれています。

沖縄県介護保険広域連合の手引きでも、すのこを作って浴室に置く場合は、住宅改修ではなく福祉用具の購入にあたるとしています。入浴に使う福祉用具(入浴補助用具)には、ほかに入浴用いす、浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台、浴槽内すのこ、入浴用介助ベルトがあります。
福祉用具の購入は、指定を受けた事業者から買ったものが対象です。介護サービス情報公表システムの説明では、同じ年度に購入できるのは10万円までで、住宅改修の20万円とは別の決まりです。工事をするか、すのこを置くかは、浴室の作りと入浴の動きを見て考えます。
入浴の動きと介助の様子を伝えて相談する
住宅改修は、工事の前に市町村への申請が必要です。申請には、ケアマネジャーなどが作る「住宅改修が必要な理由書」を付けます。厚生労働省の通知では、理由書は、心身の状況や家の中の動き方(動線)、住まいの状況、福祉用具を使っているかなどを考えて書くものとしています。
浴室の工事を相談するときは、次のことを伝えると、合う方法を考えやすくなります。
- 脱衣所から浴室に入るとき、浴槽に入るときの動き(どこにつかまるか、どこで止まるか)
- 介助する人がいるか、どこに立って介助するか
- 入浴用いすなど、いま使っている福祉用具
- 段差の高さ(那覇市の手引きでは、申請の写真は段差に測る道具を当てて、高さが分かるように撮るとしています)
入院中で、退院に合わせて工事をしたいときもあります。那覇市の手引きでは、退院して家に戻る予定なら、入院中でも工事の前の申請と工事ができ、支給の申請は家に戻ったあとにするとしています。扱いは市町村によって違うので、退院の予定が分かったら早めに相談してください。
かなさホームでは、介護福祉士と福祉住環境コーディネーターの資格を持つ担当が、浴室の作りと入浴の動きを見て、工事の方法を一緒に考えます。申請に使う見積書・図面・工事の前の写真もご用意します。ケアマネジャーの方は「ケアマネジャーの方へ」を、ご本人やご家族はお問い合わせからご相談ください。現地調査とお見積りは無料です。介護保険でできる工事はできる工事で紹介しています。部屋の出入口の小さな段差は「部屋の出入口の小さな段差はどうなくす?」をご覧ください。
よくある質問
答え:なりません。置いて使う浴室内すのこは、福祉用具の購入(入浴補助用具)の扱いです。沖縄県介護保険広域連合の手引きでも、すのこを作って置く場合は福祉用具の購入の対象としています。
答え:沖縄市の案内では、浴室の広さや介助の状況から、入浴のときに浴槽が支障になっているなら「段差の解消」として対象にするとしています。扱いは市町村が決めるので、工事の前にケアマネジャーと市町村に確かめてください。
答え:浴室の床のかさ上げにともなう給排水設備の工事は、付帯工事として対象になります(厚生労働省の通知)。蛇口の位置の変更なども、付帯工事として扱える例があります。
参考にした情報
- 10月10日は「転倒予防の日」、高齢者の転倒事故に注意しましょう!(令和2年10月8日)(新しいタブで開きます)
- たった一度の転倒で寝たきりになることも。転倒事故の起こりやすい箇所は?(新しいタブで開きます)
- 高齢者が居住する住宅の設計に係る指針(平成13年国土交通省告示第1301号)(新しいタブで開きます)
- 介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて(老企第34号)(新しいタブで開きます)
- 居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について(老企第42号)(新しいタブで開きます)
- どんなサービスがあるの? – 特定福祉用具販売(新しいタブで開きます)
- 介護保険住宅改修費支給申請の手引き(令和4年12月改定)(新しいタブで開きます)
- 介護保険の住宅改修費支給申請について(令和7年7月)(新しいタブで開きます)
- 介護保険 住宅改修の手引き(令和7年4月改正)(新しいタブで開きます)
- 『風土に根ざした家づくり手引書』(令和4年度版)第2章(新しいタブで開きます)