介護保険の住宅改修とは?
対象になる6つの工事と、支給のしくみ
「手すりを付けたい」「玄関の段差をなくしたい」。そう思ったとき、介護保険を使える場合があります。介護保険を使った住まいの工事を「住宅改修(じゅうたくかいしゅう)」といいます。
この記事では、住宅改修を使える方、対象になる6つの工事、介護保険から支給される額のしくみを、厚生労働省の資料をもとに説明します。ご本人やご家族が、はじめて調べるときの目安にしてください。
介護保険の住宅改修とは
住宅改修は、介護が必要な方が家で暮らしやすくなるための工事に、介護保険から費用の一部が支給されるしくみです。
対象は、手すりの取付けや段差の解消など、比較的小さな工事です。厚生労働省の通知では、家の財産を増やすことにつながらないよう、小さな工事に限っていると説明しています。家を新しく建てるときは、対象になりません。
家の外でも、玄関から道路までの通路の工事は対象になります。
※ 住宅改修は、工事を始める前に市町村への申請が必要です。申請の前に工事を始めると、介護保険から支給されないことがあります。
住宅改修を使える方
住宅改修を使えるのは、要支援1・2、要介護1〜5の認定を受けている方です。要介護認定(介護がどのくらい必要かを市町村が決めること)を、まだ受けていない方は使えません。
認定を受けているかどうか分からないときや、これから申請するときは、お住まいの市町村の介護保険の窓口か、ケアマネジャーにご相談ください。要支援の方は、地域包括支援センターが相談の窓口になります。認定の申請の流れは「要介護認定はどう申請する?」で紹介しています。
対象になる6つの工事
住宅改修の種類は、国の告示で次の6つが決められています。工事ごとに、厚生労働省の通知で対象になる例が示されています。

工事の名前は、告示ではもう少し長く書かれています。たとえば3つ目は「滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更」です。この記事では、分かりやすい言葉にして紹介します。
1. 手すりの取付け
廊下、トイレ、浴室、玄関、玄関から道路までの通路などに、転ぶのを防いだり、移動したりするための手すりを付けます。形は、二段式・たて付け・横付けなどから、合うものを選びます。
床に置くだけなど、工事のいらない手すりは、住宅改修ではなく福祉用具(貸し出し)の扱いになります。
2. 段差の解消
敷居を低くする、スロープを作る、浴室の床をかさ上げする、などの工事です。置くだけのスロープや、浴室にすのこを置くことは、対象になりません。昇降機や段差解消機など、電気などの動力で段差を上り下りする機械を付ける工事も、対象外です。
3. 床や通路の材料の変更
すべりにくくしたり、移動しやすくしたりするための工事です。たとえば、部屋の畳を板の床やビニル系の床にする、浴室の床をすべりにくいものにする、通路をすべりにくい舗装にする、などがあります。
那覇市の手引きでは、古くなったり傷んだりしたことが理由の床の張り替えや、すべり止めのマットを置くだけで貼り付けないものは、対象にならない例として挙げられています。ほかの対象にならない例は「住宅改修で対象にならない工事とは?」で紹介しています。
4. 引き戸などへの扉の取替え
開き戸を引き戸などにかえる工事です。扉全体の取替えのほか、扉を外す、ドアノブをかえる、戸車を付けることも含まれます。自動ドアの動力の部分は、対象になりません。
5. 洋式便器などへの便器の取替え
和式の便器を洋式の便器にかえる工事や、便器の位置や向きをかえる工事です。すでに洋式の便器に、新しい機能を付けるだけの工事は含まれません。
6. 1〜5に付帯して必要な工事
1〜5の工事のために必要になる工事です。たとえば、手すりを付けるための壁の下地の補強、浴室の床のかさ上げにともなう給排水の工事、扉の取替えにともなう壁や柱の工事、便器の取替えにともなう床材の変更などです。
工事をしない道具は「福祉用具」
手すりやスロープでも、工事をせずに置いて使うものは、住宅改修ではなく「福祉用具」の扱いです。厚生労働省の案内では、手すりやスロープは貸し出し(福祉用具貸与)、腰掛便座や入浴用のいす、浴槽用の手すりなどは購入の対象として挙げられています。工事をするか、道具を借りるかは、ケアマネジャーと相談して決めます。借りられる用具は「介護保険で借りられる福祉用具は?」で紹介しています。
支給される額のしくみ
住宅改修で介護保険の対象になる工事費は、20万円までです。要支援・要介護の区分にかかわらず、同じ額です。
この20万円は、一人につき生涯で20万円です。20万円までなら、何回かに分けて使えます。たとえば、今年10万円の工事をすると、残りの10万円分は、あとの工事で使えます。
介護保険から支給されるのは、工事費の9割が基本です。所得によっては8割か7割になります。自己負担は、工事費の1割から3割です。

工事費が20万円をこえたときは、こえた分は介護保険から支給されず、全額が自己負担になります。ご自分の場合のおおよその額は、支給額チェックで確かめられます。
もう一度20万円まで使えるとき
要介護度が変わっても、20万円の上限は増えません。ただし、次のときは、もう一度20万円まで使えます。
- 「介護の必要の程度」が3段階以上重くなったとき(1回だけ)。たとえば、要支援1の方が要介護3になったときです。段階は、要支援1、要支援2と要介護1(この2つは同じ段階)、要介護2、要介護3、要介護4、要介護5の6つで数えます
- 引っ越しをしたとき(前の家に戻ったときは、前の家の残りの額になります)
お金の受け取り方
支給の受け取り方には、2つの方法があります。
- 償還払い(しょうかんばらい):工事費の全額をいったん事業者に払い、あとで介護保険の支給分が戻ってくる方法です。
- 受領委任払い(じゅりょういにんばらい):自己負担の分だけを事業者に払い、介護保険の支給分は、市町村などから事業者に直接支払われる方法です。
受領委任払いは、市町村などに登録した事業者に工事を頼んだときに使えます。使える条件は、お住まいの市町村によって違います。くわしい流れと書類は「介護保険の住宅改修、申請の流れは?」で紹介しています。
工事を考えたら、まず相談する
住宅改修は、工事の前の相談と申請が大切です。まずは、ケアマネジャー(要支援の方は地域包括支援センター)に、困っていることを伝えてください。工事の前の申請には、ケアマネジャーなどが作る「住宅改修が必要な理由書」や、工事費の見積書が必要です。
かなさホームでは、介護福祉士と福祉住環境コーディネーターの資格を持つ担当が、体の状態や動き方をうかがいながら、どこに何が必要かを一緒に考えます。介護保険で何ができるかは、介護保険についてとできる工事でも紹介しています。ご相談はお問い合わせからどうぞ。
よくある質問
答え:一人につき生涯で20万円までなら、何回かに分けて使えます。20万円を使い切ったあとは、3段階以上重くなったときや、引っ越しをしたときに、もう一度使えます。
答え:要介護度が変わっただけでは、20万円の上限は増えません。「介護の必要の程度」が3段階以上重くなったときは、1回だけ、もう一度20万円まで使えます。
答え:ご本人やご家族が工事をしたときは、材料を買った費用が対象になります。
答え:なりません。工事のいらない手すりやスロープは、福祉用具の貸し出しや購入の扱いです。ケアマネジャーにご相談ください。
答え:使えません。家を新しく建てる工事は、住宅改修の対象外です。
参考にした情報
- 介護保険における住宅改修(新しいタブで開きます)
- 介護保険における住宅改修(屋外の工事の扱いの経緯)(新しいタブで開きます)
- 厚生労働大臣が定める居宅介護住宅改修費等の支給に係る住宅改修の種類(平成11年厚生省告示第95号)(新しいタブで開きます)
- 介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて(老企第34号)(新しいタブで開きます)
- 居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について(老企第42号)(新しいタブで開きます)
- 居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費支給限度基準額(平成12年厚生省告示第35号)(新しいタブで開きます)
- 福祉用具・住宅改修(新しいタブで開きます)
- 福祉用具購入費及び住宅改修費の受領委任払い制度について(新しいタブで開きます)
- 介護保険住宅改修費支給申請の手引き(令和4年12月改定)(新しいタブで開きます)