スロープを付けるには?
工事のスロープと置くスロープ、勾配の目安
玄関の段差や、玄関から道路までの段差。車いすを使う方や、歩くのが不安な方にとって、スロープは外に出る道をつくってくれます。
この記事は、ケアマネジャーさまに向けて、介護保険でスロープを使う3つの方法と、それぞれの扱いをまとめました。工事で付けるときの付帯工事や勾配の目安、置くスロープの貸与と購入(選択制)を、厚生労働省と沖縄の市町村の資料をもとに紹介します。
スロープには3つの使い方(工事・借りる・買う)
介護保険でスロープを使う方法は、3つあります。
- 工事で付ける:住宅改修(介護保険を使った住まいの工事)の「段差の解消」
- 借りる:福祉用具の貸与(レンタル)の「スロープ」
- 買う:福祉用具の購入の「固定用スロープ」(令和6年4月から)

厚生労働省の通知では、取り付けに工事がいるスロープは貸与から除かれ、「段差の解消」にあたるものは住宅改修の対象になるとしています。反対に、貸与のスロープを置くだけの段差の解消は、住宅改修から除かれています。
スロープは、要支援1・2と要介護1の方でも借りられる種目です。車いすや特殊寝台などと違い、原則として対象外になる種目には入っていません。
工事で付けるスロープと、柵・立ち上がり
住宅改修の「段差の解消」は、部屋と部屋のあいだの床の段差や、玄関から道路までの通路の段差・傾斜をなくす工事です。厚生労働省の通知では、例としてスロープを設置する工事が挙げられています。
スロープの横に付ける、転落や脱輪を防ぐための柵や立ち上がりは、付帯工事(主な工事のために必要になる工事)として対象です。
市町村の手引きにも、例が載っています。
- 那覇市(令和4年12月改定):屋外にスロープを設置する工事は対象(転落防止の柵も付帯工事として対象)。敷居にスロープを固定する工事や、階段や通路の傾斜をゆるやかにする工事も対象。スロープや踏み台を固定せずに置くだけの工事は対象外
- 沖縄市(令和7年7月の案内):固定しないスロープや踏み台は対象外。通路を新しく作ることや、広げることも対象外
- 沖縄県介護保険広域連合(令和7年4月改正):掃き出し窓にスロープを付ける工事も、玄関と同じように「段差の解消」として対象。スロープから道路までの通路を作る工事は、「通路面の材料の変更」として対象
玄関ではなく、掃き出し窓から出入りするためのスロープについて、沖縄市の案内では、玄関からの出入りがむずかしい理由があり、出入りの経路を掃き出し窓に移す必要がある場合は対象としています。理由書で、その必要性を説明することになります。
※ 住宅改修は、工事の前に市町村への申請が必要です。対象になるかどうかは、保険者である市町村が決めます。
勾配の目安と、場所の広さ
スロープの勾配(傾き)について、沖縄市の案内(令和7年7月)では、バリアフリー法で定められている1/12以下にするよう求めています。1/12は、高さ1に対して長さ12の傾きです。高さが50センチメートルあると、6メートル以上のスロープが必要になります。同じ計算で、高さ30センチメートルなら3.6メートル以上です。

同じ案内では、家の状況などでこれを満たせないときは相談するよう書かれています。ただし、建築基準法にもとづき、1/8をこえる工事は、どんな場合も支給の対象にならないとしています。ほかの市町村の扱いは、それぞれの窓口に確かめてください。
国土交通省の「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」にも、傾斜路の勾配として1/12以下という数字があります。ただし、これはマンションなどの共用廊下の数字です。一戸建ての家の屋外については、アプローチを歩く人や車いすに配慮した形や寸法にすることが示されていて、勾配の数字はありません。
勾配をゆるやかにするほど、スロープは長くなります。家の前にその長さをとれるかが、工事のスロープを考えるときのポイントです。沖縄市の案内のように、通路を新しく作ったり広げたりする工事は対象外なので、今ある通路の中で納まるかを見ます。
置くスロープ(貸与と、固定用スロープの購入)
工事をしないで置くスロープは、福祉用具です。厚生労働省の通知では、貸与のスロープに、その方のために改造したものや、持ち運びが容易でないものは含まれないとしています。
令和6年4月からは、一部の用具で、借りるか買うかを選べるようになりました(選択制)。スロープでは「固定用スロープ」が対象です。主に敷居などの小さい段差に使い、たびたび持ち運ぶ必要のないものをいいます。設置や撤去、持ち運びができる「可搬型」のものは除かれます。
厚生労働省の資料では、選択制の進め方の例として、次の流れが示されています。
- ケアマネジャー(いない場合は福祉用具専門相談員)が、利用者に選択制のしくみを説明する
- サービス担当者会議などで、医師などの所見をふまえて話し合い、提案する
- 利用者が、借りるか買うかを選ぶ
借りることを選んだ場合は、福祉用具専門相談員が、使い始めのときか6か月以内に少なくとも1回、使い方や体の状態の変化を確かめる(モニタリング)ことになっています。そのうえで、借り続けるか、買うことに移るかを考えます。
借りる場合は、指定を受けた事業者が、合う用具を選ぶ手伝いや取り付け・調整をします。費用の1割(所得によって2割か3割)を払い、要介護度ごとの1か月に使える額の中で借ります。買う場合は、同じ年度に購入できるのは10万円までで、いったん全額を払い、あとで支給分が戻ります(介護サービス情報公表システムの説明)。
車いすの使い方と家のまわりを見て相談する
工事のスロープにするか、置くスロープにするかは、段差の高さ、家のまわりの広さ、使い方で変わります。相談するときは、次のことを伝えると考えやすくなります。
- 車いすを自分でこぐか、介助する人が押すか
- 出入りする場所(玄関か、掃き出し窓か)と、道路までの道のり
- 雨の日の出入り(政府広報オンラインでは、ぬれたスロープですべって転ぶ例を挙げています)
沖縄県の『風土に根ざした家づくり手引書』では、アプローチ(道路から玄関までの道)に、ゆるやかなスロープや手すりを設けて通りやすくすること、すべりにくい床材にすること、外灯と足元灯で明るくすることを挙げています。駐車場に屋根を付けると、車いすへの乗り換えに便利だともしています。
かなさホームでは、介護福祉士と福祉住環境コーディネーターの資格を持つ担当が、家のまわりと出入りの様子を見て、工事のスロープや手すりを一緒に考えます。申請に使う見積書・図面・工事の前の写真もご用意します。「ケアマネジャーの方へ」もご覧ください。部屋の出入口の小さな段差は「部屋の出入口の小さな段差はどうなくす?」、玄関の外の手すりは「玄関の外や外階段の手すりは?」で紹介しています。
よくある質問
答え:沖縄市の案内では、1/12以下にするよう求めていて、高さが50センチメートルなら6メートル以上のスロープが必要です。1/8をこえる工事は対象になりません。扱いは市町村によって違うので、窓口に確かめてください。
答え:沖縄市の案内では、玄関からの出入りがむずかしく、経路を掃き出し窓に移す必要がある場合は対象としています。沖縄県介護保険広域連合の手引きでも、掃き出し窓のスロープは段差の解消として対象です。
答え:置くスロープは、福祉用具の貸与で借りられます。敷居などの小さい段差に使う固定用スロープは、令和6年4月から、借りるか買うかを選べるようになりました。
参考にした情報
- 介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて(老企第34号)(新しいタブで開きます)
- 福祉用具貸与と特定福祉用具販売の選択制について(選択制の対象とする種目に関する解釈)(新しいタブで開きます)
- どんなサービスがあるの? – 福祉用具貸与(新しいタブで開きます)
- どんなサービスがあるの? – 特定福祉用具販売(新しいタブで開きます)
- 介護保険の住宅改修費支給申請について(令和7年7月)(新しいタブで開きます)
- 介護保険住宅改修費支給申請の手引き(令和4年12月改定)(新しいタブで開きます)
- 介護保険 住宅改修の手引き(令和7年4月改正)(新しいタブで開きます)
- 高齢者が居住する住宅の設計に係る指針(平成13年国土交通省告示第1301号)(新しいタブで開きます)
- 『風土に根ざした家づくり手引書』(令和4年度版)第2章(新しいタブで開きます)
- たった一度の転倒で寝たきりになることも。転倒事故の起こりやすい箇所は?(新しいタブで開きます)