塗料のカタログや見積もりの説明で、「耐用年数」や「何年もつ」という年数を見かけることがあります。この年数は、どう受け止めればよいのでしょうか。
この記事では、塗料メーカーが示す「期待耐用年数」の意味と、塗膜(塗料が乾いてできる膜)を傷める紫外線、那覇の紫外線の強さ、同じ塗料でも年数が変わる理由を、塗料メーカーや気象庁、沖縄県の資料をもとに紹介します。
「期待耐用年数」は約束ではなく目安
塗料メーカーの日本ペイントは、期待耐用年数を、塗膜の汚れ・チョーキング(白亜化)・色の変化・表面のひび割れが進み、塗膜の寿命によって、下地を守る働きが期待できなくなると予想される「目安の時期」としています。
同社は、塗膜の表面に強いチョーキング(外壁をさわると手に白い粉が付くこと)や色の変化が見えはじめる時期を「外観変化時期」とよび、そこから期待耐用年数までのあいだを、塗膜を直すのに適した「塗り替えの目安」としています。
そのうえで、期待耐用年数は「あくまでも目安」で、内容を保証するものではないと明記しています。年数は、標準的な環境で、決められた量・薄め方・乾かす時間・混ぜる割合などで塗ったときを想定したものです。また、チョーキングや色の変化は、期待耐用年数より前に出ることもあります。
塗料メーカーのエスケー化研は、塗膜の傷み方を4つの段階で説明しています。
- 汚れや色あせなど、見た目が悪くなる
- 表面の劣化が進み、チョーキングや摩耗、ひび割れなどが出る
- さらに進み、浮きやはがれが出はじめる
- 塗膜がつながらなくなり、下地との密着や、守る働きを失う
エスケー化研は、2〜3の段階に達した時期(3の手前が理想)を最適な修繕の時期とし、そこまでの期間を耐用年数としています。表示している年数は、材料や地域、施工の水準、手入れ、塗る場所などのさまざまな要因を考えて決めている、とも説明しています。
塗膜を傷める紫外線と、那覇の紫外線
日本ペイントは、塗膜が傷む主な原因として「紫外線」「熱(太陽光の赤外線)」「水」の3つを挙げています。塗膜の「耐候性」とは、日光や雨風、寒暖、乾湿などの自然の作用に耐えて変化しにくい性質のことで、とくに紫外線と雨水への強さを意味するとされています。
日本塗料工業会の資料によると、紫外線は太陽の光のエネルギーの約3%にすぎませんが、物を劣化させたり日焼けの原因になったりする、化学的な作用をもつ光です。エスケー化研は、紫外線や酸素、水などが塗膜に含まれる顔料にふれて生まれる「ラジカル」という物質が、塗膜の樹脂を分解して劣化が進むと説明しています。
では、那覇の紫外線はどのくらい強いのでしょうか。気象庁は、紫外線が人の体に及ぼす影響の度合いを表す「UVインデックス」を、那覇でも観測していました(那覇の観測は2018年1月で終了)。2017年の那覇の、1日の最大の値の月平均は、7月が10.9と最も高く、同じ年のつくば(茨城県)の7月の7.3を大きく上回っています。那覇では、4月から10月まで、月平均が6を超えていました。

UVインデックスは人の体への影響を表す指標で、塗膜の傷み方をそのまま表すものではありません。それでも、日差しの強さを知る目安になります。日本ペイントは、日差しの影響を強く受ける地域や立地、方角や部位では、塗膜の劣化が早く進む可能性があるとしています。
耐候性を確かめる試験と規格
外壁の上塗りの塗料には、日本産業規格の「JIS K 5658 建築用耐候性上塗り塗料」があります。コンクリートやモルタルなどの仕上げの塗装に使う塗料のうち、ふっ素樹脂・シリコーン樹脂・ポリウレタン樹脂を主な原料にして、主剤と硬化剤を混ぜて固める塗料についての規格です。
規格では、塗料を等級に分け、品質と試験の方法を決めています。試験には、劣化を早める条件で調べる「促進耐候性」や、屋外に置いて調べる「屋外暴露耐候性」などがあります。試験は決まった条件で比べるためのもので、実際の家の外壁は、次に紹介するような条件で傷み方が変わります。
日本ペイントの用語の説明では、耐候性に優れた上塗りの塗料は、一般にウレタン樹脂塗料以上のグレードのもので、ウレタンよりワンランク上のシリコン樹脂塗料が主流とされています。塗料の種類のちがいは「外壁の塗料はどう選ぶ?」で紹介しています。
同じ塗料でも年数が変わる理由
塗膜の年数を左右するのは、塗料の種類だけではありません。日本ペイントは、次のような条件では、塗膜の劣化が早く進む可能性があるとしています(主なもの)。

日当たり・潮風・湿気
- 日差しの影響を強く受ける地域や立地、方角や部位。同社の外壁の期待耐用年数は、一般的な都市部の東と西の面を想定したもので、屋根の期待耐用年数は外壁の2分の1から3分の2程度です
- 沿岸部など塩害の影響を受ける地域、山あいや海・川の近くなど湿度の高い地域、雨の量がとても多い地域
気象庁の平年値(1991〜2020年)では、那覇の年平均の湿度は73%です。海に囲まれた沖縄は、これらの条件が重なりやすい環境といえます。
下地の状態
- 下地に塗料の付着をさまたげる物があるときや、下地が劣化などでもろくなっているとき(早くはがれるおそれ)
- 下地から水分や熱の影響をいつも受けるとき、コンクリートなど下地のアルカリ性の成分の影響を強く受けたとき
- 熱をためやすい建材や、鉄・アルミのように熱による変化が大きい素材
塗る量と塗り方
- 塗った直後に雨や結露など水の影響を受けたとき。塗るときや乾くときの気温が低すぎたり高すぎたり、湿度が高かったりするとき
- 塗料と硬化剤を混ぜる割合が決まりと違ったり、混ぜ方が足りなかったりするとき
日本ペイントによると、外壁のコンクリートやモルタルなどに塗るとき、中塗り・上塗りの1回あたりの塗膜の厚さは、平均で0.03ミリ(30ミクロン)前後です。とても薄い膜なので、決められた量と工程で塗ることが、塗料の性能を生かすうえで大切です。
自分の家の塗り替えの時期を確かめる
年数は目安で、実際の塗り替えの時期は、いまの外壁の状態で考えます。晴れた日に家のまわりを一周して、外壁を手のひらでさわってチョーキングがないか、ひび割れや色あせがないかを見てみてください。沖縄県の手引書の点検の目安では、外壁の塗装は、汚れ、チョーキング、浮き、ひび割れなどをふだんから目で見て確かめ、10〜15年くらいで全面補修を検討するとされています。使う材料や劣化の状態によって、時期にはかなりの幅があるとも書かれています。
日本ペイントは、つやがなくなり、汚れや色あせが目立って、外壁や屋根の見た目が気になってきたときが、塗り替えを検討するタイミングだとしています。
当てはまるサインを選ぶと塗り替え時期の目安がわかる劣化セルフ診断や、写真を送るだけで担当者が状態をお返しする写真で無料診断をご利用ください。塗料ごとの塗り替えの目安と長い目で見た費用は、塗料グレード比較で比べられます。工事の保証の考え方は「塗装・防水工事の保証書は何を見る?」で紹介しています。
ご相談・現地調査・お見積りは無料です。お問い合わせからどうぞ。
よくある質問
塗料の種類によりますが、一般的には10〜15年ごとが目安です。沖縄は紫外線と潮風が強く、本土より早く傷みやすいので、色あせやひび割れ、触ると白い粉が付く(チョーキング)などのサインが出たら、早めの点検をおすすめします。
塗料メーカーの日本ペイントによると、上塗りの回数を増やすと見た目がよくなる場合はありますが、塗膜の劣化は表面の近くから進むため、厚く塗っても抑えることはできません。さび止めの塗料は、塗り重ねて厚くするとさびにくくなりますが、極端に厚くすると、はがれなどの不具合が出ることがあるとされています。
同じではありません。塗料メーカーが示す期待耐用年数は、塗膜が下地を守れなくなると予想される目安の時期で、内容を保証するものではないとされています。工事の保証の範囲や期間は、工事をする会社の保証書や契約で確かめましょう。
参考にした情報
- 期待耐用年数(用語解説)(新しいタブで開きます)
- 耐候性(用語解説)(新しいタブで開きます)
- 耐候性塗料(用語解説)(新しいタブで開きます)
- 塗膜の劣化(塗料の基礎知識)(新しいタブで開きます)
- 上塗り塗料の塗り重ね回数を多くすれば、耐久性はより良くなりますか?(新しいタブで開きます)
- 外壁や屋根を塗装すると膜厚はどのくらいになりますか?(新しいタブで開きます)
- 一般的にはどのようなタイミングで外壁の塗替えをするのがよいでしょうか?(新しいタブで開きます)
- よくあるご質問(用語説明)(新しいタブで開きます)
- 高日射反射率塗料について(2011年7月)(新しいタブで開きます)
- JIS K 5658 建築用耐候性上塗り塗料(規格の見本ページ)(新しいタブで開きます)
- UVインデックスとは(新しいタブで開きます)
- 日最大UVインデックス(観測値)の月平均値の数値データ表(那覇)(新しいタブで開きます)
- 日最大UVインデックス(観測値)の月平均値の数値データ表(つくば)(新しいタブで開きます)
- 平年値(那覇)(新しいタブで開きます)
- 『風土に根ざした家づくり手引書』(令和4年度版)附録(新しいタブで開きます)