塗装の見積書を見ると、「下塗り」「シーラー」「フィラー」「プライマー」「さび止め」など、聞きなれない言葉が並んでいることがあります。下塗りは、仕上がってしまうと見えなくなる工程ですが、塗装を長持ちさせるための大事な役目をもっています。
この記事では、下塗りの役割と下塗り材の種類、下地(塗る面の材料)に合った下塗りの考え方、専用の下塗りが決まっている塗料の例を、塗料メーカーや国の資料をもとに紹介します。見積書の材料名が気になっている方に読んでいただきたい内容です。
下塗りの4つの役割
日本ペイントは、外壁や屋根を1回塗りで仕上げると、十分な厚みを確保しにくく、透け・はがれ・色むらが起きやすいと説明しています。住宅の塗り替え用の塗料の多くは、下塗り・中塗り・上塗り(または下塗り・上塗り)を重ねて仕上げるようにつくられていて、それぞれの塗料が役目を分け合うことで、よい塗膜(塗料が乾いてできる膜)になります。

- くっつける:下地と上塗りのあいだに入って、塗膜がはがれにくくなるようにします
- 吸い込みを止める:コンクリートやモルタルのように、塗料を吸い込みやすい面に塗って、上塗りがむらなく仕上がるようにします
- 凹凸をならす:細かいくぼみや穴を埋めて、面を平らにととのえます
- さびを防ぐ:鉄の部分では、さび止めの塗料が下塗りになります
下塗りの前の準備も大切です。日本ペイントは、汚れや傷んだ塗膜を残したまま塗ると、塗料がしっかり付かず、はがれの原因になると説明しています。エスケー化研は、下地がコンクリートの場合、付いている汚れなどを取り除き、よく乾かしてから下塗りをする(含水率10%以下が目安)としています。
TRUSSの外壁塗装でも、ひび割れの補修やシーリングの打ち替えなどの下地処理のあとに、塗料がしっかり密着するように下塗りをし、そのうえで上塗りを2回塗ります。
下塗り材の種類(シーラー・フィラー・プライマー・さび止め)
見積書に出てくる下塗り材の名前と、主な役目をまとめました。
| 名前 | 主な役目 |
|---|---|
| シーラー | 下地の吸い込みを止める |
| フィラー | 凹凸やくぼみをならす |
| プライマー | 下地に直接塗って、付着やさび止めを強める |
| さび止め | 鉄やめっきの面のさびを防ぐ |
シーラー
関西ペイントの用語事典では、シーラーを「素地の吸い込みを止める下塗り」と説明しています。国の改修工事の仕様でも、モルタルやコンクリートの面の塗り替えでは、傷んだ塗膜を取り除いた範囲に、吸い込み止めのシーラーを塗る工程があります。
フィラー
「フィラー」は、見積書や製品で使われる呼び名です。日本建築仕上材工業会は、改修工事用の仕上塗材の主材が「微弾性フィラー」などとも呼ばれ、いまある塗膜のほとんどに使えることから、これを使った塗り替えが一般的になっていると説明しています。凹凸をならす下地調整の塗材は、JIS(日本産業規格)では「建築用下地調整塗材」として定められています。
プライマー
関西ペイントの用語事典では、プライマーを「素地に直接塗って、塗膜の付着性やさび止め性を強化する塗料」と説明しています。日本ペイントは、可塑剤(材料をやわらかくする成分)を含む目地のシーリング材の上に直接塗ると、可塑剤が塗膜の表面に移ってべたつき、黒い筋の汚れの原因になるとしています。それをおさえるプライマーを下塗りすれば、防ぐことができるとしています。
さび止め
日本ペイントは、鉄の部分の塗装では、塗る前のさび落とし(ケレン)がもっとも大事な工程だとしています。さびが多く残ったままだと、さび止めの力が十分に発揮されません。また、さび止めは塗り重ねて厚くすると、よりさびにくくできますが、極端に厚くすると、はがれなどの不具合が出ることがあるとしています。
下地に合った下塗りを選ぶ
同じ「下塗り」でも、塗る面の材料によって、使う下塗り材と準備のしかたが変わります。

コンクリート・モルタル
国の改修工事の仕様では、塗り替えのとき、傷んで弱くなった塗膜を取り除き(しっかり付いている塗膜は残す)、汚れを落とし、ひび割れを補修したうえで、吸い込み止めのシーラーを塗り、下地調整塗材などでひびや穴を埋めて平らにする手順が示されています。
窯業系サイディング
日本ペイントによると、窯業系サイディングは2000年代の初めから種類が増え、光触媒など、高耐久のサイディングが多くなりました。こうしたサイディングは、ふつうのサイディングに使う下塗りでは、しっかり付かない場合があります。サイディングの種類に合った下塗りを選ぶことが大切です。前の塗装が弾性塗料(伸びる塗料)の場合は、そのまま塗り重ねると、ふくれが出ることがあるともしています。弾性塗料のくわしいことは「弾性塗料とは?」で紹介しています。
鉄
国の改修工事の仕様では、ディスクサンダーなどの工具で傷んだ塗膜やさびを取り除き、ワイヤブラシで汚れを落とし、油分をふき取り、研磨紙で表面を研いでから、さび止めの塗料を塗ります。
亜鉛めっき
日本溶融亜鉛鍍金協会によると、亜鉛は反応しやすい金属なので、鉄と同じやり方で塗ると、亜鉛と塗料の成分が反応して、塗膜がはがれることがあります。日本ペイントは、新しい溶融亜鉛めっきの面には、付着をさまたげるものが付いている可能性が高いため、専用の下塗りを使わないとはがれやすいと説明しています。国の改修工事の仕様でも、亜鉛めっきの面のさび止めは、鉄の面とは別の種類が決められています。亜鉛めっきには、亜鉛めっきに合うさび止めを使います。
専用の下塗りが決まっている塗料もある
塗料メーカーは、塗料ごとに、どの下塗りと組み合わせるかを決めています。日本ペイントは、自社の遮熱塗料について、上塗りではね返しきれなかった日差しの熱(近赤外線)を、専用の下塗りが補助的にはね返すしくみだと説明しています。専用の下塗りを使わなくても、はがれるような問題は起きませんが、組み合わせる下塗りの種類や色によっては、遮熱の効果が最大20%ほど下がるおそれがあるとしています。
水性と溶剤形の塗料の組み合わせにも注意が要ります。日本ペイントによると、溶剤形の塗料の上に水性の塗料を重ねるのは、基本的に問題ありません。一方、水性の塗料の上に溶剤形の塗料を重ねるときは、溶剤が下の塗膜をいため、ふくれやしわが出る組み合わせもあります。塗装の仕様書にない組み合わせを試すときは、前もって試し塗りをすることを勧めています。日本建築仕上材工業会も、いまある塗膜と、塗り替えに使う塗材には相性があるとしています。
日本ペイントは、上塗りの塗料にシーラーやさび止めを混ぜて塗ると、かえって長持ちしなくなるおそれがあり、別の塗料を混ぜて使うことは避けるよう呼びかけています。下塗りから上塗りまで、決められた組み合わせと順番で塗ることが大切です。
塗装の内容を確かめる・相談する
下塗りは、上塗りをしっかりくっつけ、下地を守るための工程です。下地の材料やいまの塗装に合った下塗り材を選び、決められた組み合わせで塗ることが、仕上がりと長持ちにつながります。
住まいるダイヤル(住宅リフォーム・紛争処理支援センター)は、見積書を受け取ったら、必要な項目の書きもれがないか、数量が「一式」になっていないかを確かめ、材料の仕様が書かれていないときは事業者に聞くよう勧めています。
TRUSSの外壁塗装の工程は外壁塗装のページで紹介しています。料金の目安のページの費用の内訳にも、下地処理・下塗りの項目があります。塗料の選び方は「水性塗料と油性(溶剤形)塗料のちがい」、屋根の下塗りとさび落としは「屋根塗装の工程」でも紹介しています。
よくある質問
塗料メーカーが決めた組み合わせで塗るのが基本です。日本ペイントによると、溶剤形の塗料の上に水性の塗料を重ねるのは基本的に問題ありませんが、水性の塗料の上に溶剤形の塗料を重ねるときは、ふくれやしわが出る組み合わせもあります。仕様書にない組み合わせは、前もって試し塗りをすることが勧められています。
はい。日本ペイントは、鉄の部分の塗装では、塗る前のさび落とし(ケレン)がもっとも大事な工程だとしています。さびが多く残ったまま塗ると、さび止めの力が十分に発揮されません。
まずは、見積もりを出した事業者に、下塗りが入っているか、どの材料を何回塗るのかを確かめてください。住まいるダイヤルは、必要な項目の書きもれがないかを確かめ、材料の仕様が書かれていないときは事業者に確認するよう勧めています。
参考にした情報
- 用語事典(塗料)(新しいタブで開きます)
- 外壁や屋根を1回塗りで仕上げたいが可能ですか?(新しいタブで開きます)
- 塗装前になぜ外壁や屋根を高圧洗浄したりするのですか?(新しいタブで開きます)
- 公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版 7章 塗装改修工事(新しいタブで開きます)
- JIS A 6916:2021 建築用下地調整塗材(規格の閲覧用の抜粋)(新しいタブで開きます)
- 【材料一般】に関するQ&A(新しいタブで開きます)
- よくあるご質問(施工について)(新しいタブで開きます)
- 外壁の窯業系サイディングの塗替えは注意が必要と聞いたがどういう意味ですか?(新しいタブで開きます)
- 外壁の窯業系サイディング目地のシーリング面もいっしょに塗装したいが可能ですか?(新しいタブで開きます)
- さび止めペイントは、塗る前にさび落としが必要ですか?(新しいタブで開きます)
- 上塗り塗料の塗り重ね回数を多くすれば、耐久性はより良くなりますか?(新しいタブで開きます)
- ピカピカと光輝く亜鉛めっき鋼面には塗装できないと聞いたが本当ですか?(新しいタブで開きます)
- 亜鉛めっき上の塗装について(新しいタブで開きます)
- 遮熱塗料の塗装で、専用下塗を使わないとどんな問題が生じるのですか?(新しいタブで開きます)
- 外壁用の水性塗料と溶剤形塗料を組み合わせて塗っても大丈夫ですか?(新しいタブで開きます)
- 水性塗料、溶剤系塗料同士なら、別の塗料を混ぜて塗っても問題ないですか?(新しいタブで開きます)
- リフォーム見積書セルフチェックのポイント(ポイント3)(新しいタブで開きます)