工事のいらない手すりとは?
床に置く手すりと、工事で付ける手すりの違い
手すりを付けたいけれど、壁に穴をあけたくない。賃貸なので工事をしにくい。そんなときに考えたいのが、工事のいらない手すりです。
介護保険で使える手すりには、福祉用具として「借りる手すり」と、住宅改修(介護保険を使った住まいの工事)として「工事で付ける手すり」があります。この記事は、ケアマネジャーさまやご家族に向けて、2つの違いと、どちらにするかを考えるときのポイントを、厚生労働省と沖縄の市の資料をもとにまとめました。
手すりには「借りる手すり」と「工事で付ける手すり」がある
どちらの手すりも、転ぶのを防いだり、歩く・乗り移る動きを助けたりするためのものです。厚生労働省の通知では、手すりを、取り付けに工事がいるかどうかで分けています。
- 工事がいらない手すり:福祉用具の貸与(レンタル)の対象
- 工事で付ける手すり:住宅改修の「手すりの取付け」の対象

2つは、使うしくみが違います。
借りる手すりは、福祉用具貸与(ふくしようぐたいよ)というサービスです。指定を受けた事業者が、心身の状況や家の様子をふまえて、合う用具を選ぶ手伝いや取り付け・調整をします。費用の1割(所得によって2割か3割)を、借りているあいだ払います。介護サービス情報公表システムの説明では、要介護度ごとに1か月に使える額が決まっていて、ほかの介護サービスと組み合わせて、その中で借ります。
工事で付ける手すりは、住宅改修です。廊下、トイレ、浴室、玄関、玄関から道路までの通路などに付けます。形は、二段式・たて付け・横付けなど、合うものを選びます。手すりを付けるための壁の下地の補強も、付帯工事として対象です。対象になる工事費は20万円までで、工事の前に市町村への申請がいります。
借りられる手すりの2つの型
福祉用具の貸与で借りられる手すりは、厚生労働省の通知で、次の2つの型に限られています。どちらも、取り付けに工事がいらないものです。
- 床に置いて使うことなどで、転ぶのを防いだり、歩く・乗り移る動きを助けたりする手すり
- 便器やポータブルトイレを囲んで置き、座った姿勢を保つ・立ち上がる・乗り移る動きを助ける手すり

1つ目は、台座を床に置いて立てる形などで、ベッドから立ち上がる所や、部屋の中の歩く所で使います。2つ目は、トイレで便器のまわりに置いて使う形です。
浴槽のふちにはさんで固定する「浴槽用手すり」は、この2つとは別です。厚生労働省の通知では、入浴補助用具の1つとして、福祉用具の購入の対象になっています。借りるのではなく、指定を受けた事業者から買って、あとで介護保険の支給を受けます。購入できるのは、同じ年度で10万円までです(介護サービス情報公表システムの説明)。
手すりは、要支援1・2と要介護1の方でも、借りられる種目です。厚生労働省の資料では、車いすや特殊寝台(介護用のベッド)など一部の種目は、要支援1・2と要介護1の方は原則として対象外です。手すりは、その中に入っていません。
ねじで留める簡単なものも「工事」になる
気をつけたいのは、「簡単な取り付け」の扱いです。厚生労働省の通知では、貸与の手すりから除く「工事」に、ねじなどで家に取り付ける簡単なものも含むとしています。
つまり、ねじで壁や床に留める手すりは、借りる手すりにはなりません。「手すりの取付け」にあたるものは、住宅改修として、工事の前の申請がいります。たとえば、玄関の上がりかまち(玄関の段差)の横に、床や壁にねじで留めて立てる手すりは、工事の手すりとして考えます。
市の手引きにも、同じ考え方が載っています。
- 那覇市(令和4年12月改定):取り付け工事を伴わない手すりの設置は、住宅改修の対象外の例
- 沖縄市(令和7年7月の案内):工事が必要でない手すりは、住宅改修ではなく福祉用具の購入・貸与の対象。固定されていない下駄箱や家具に付ける手すりも対象外で、据え付けの下駄箱や家具なら対象
※ 工事で付ける手すりは、工事の前に市町村への申請が必要です。先に付けてしまうと、介護保険から支給されないことがあります。
ベッドに付ける手すりは別の種目
ベッドの横に付けて、起き上がりや乗り移りに使う手すりもあります。これは、上で紹介した「手すり」の種目ではありません。厚生労働省の通知では、特殊寝台の付属品の「ベッド用手すり」として、別に決められています。
特殊寝台とその付属品は、要支援1・2と要介護1の方は、原則として貸与の対象外です。体の状態によっては、市町村の確認などで例外として借りられる場合があります。
ベッドに手すりをねじで留める場合の扱いは、市によって考え方が違います。
- 宜野湾市(令和7年3月の注意事項):ベッドは家ではないため、ベッドのフレームにねじで留める手すりは住宅改修の範囲ではなく、福祉用具の貸与が適当
- 沖縄市(令和7年7月の案内):ベッドに手すりを付けることが必要と判断される場合は、例外として住宅改修の対象
宜野湾市の注意事項には、利用者の体重が100キロをこえていて、ベッドの手すりを安定させるために床(家)にねじで留めた例を、住宅改修として認めたと書かれています。似た場合は、市に相談するよう求めています。扱いは保険者である市町村が決めるので、計画の前にお住まいの市町村に確かめてください。
家の状況と使い方で、どちらにするか相談する
借りる手すりと工事の手すりは、どちらが良いというものではありません。たとえば、次のようなことを考えて選びます。
- 壁に手すりを付けられるか(壁の作りや、賃貸で持ち主の承諾が得られるか)
- 使う場所が決まっているか、部屋の中で動かしたいか
- ほかの介護サービスと合わせた、1か月に使える額の中に入るか
厚生労働省は、借りる用具は、担当のケアマネジャーと福祉用具の貸与事業者に相談して決めるよう案内しています。貸与の事業所には、福祉用具専門相談員(用具を選び、使い方を助言する専門職)がいます。宜野湾市の注意事項では、住宅改修の申請の図面に、借りている手すりも書くよう求めています。住宅改修は、家の中の動き方や、福祉用具の使い方とあわせて考えるものだからです。同じ注意事項では、退院の前後は体の状態が変わることが考えられるため、主治医や理学療法士・作業療法士などの意見も参考にして、工事の内容を決めることが望ましいとしています。
かなさホームは、工事で付ける手すりを担当しています。介護福祉士と福祉住環境コーディネーターの資格を持つ担当が、体の状態や動き方をうかがいながら、付ける場所や形を一緒に考えます。現地調査とお見積りは無料です。ご相談はお問い合わせから、ケアマネジャーの方は「ケアマネジャーの方へ」もご覧ください。要支援の方の相談先は「要支援1・2でも住宅改修は使える?」で、工事のいらない転倒予防の工夫は「家の中で転ばないために、今日からできることは?」で紹介しています。
よくある質問
答え:工事のいらない手すりは、福祉用具の貸与で借りられます。床に置いて使う手すりなどがあります。賃貸の家でも、家の持ち主の承諾があれば、住宅改修で手すりを付けられる場合があります。まずはケアマネジャーにご相談ください。
答え:借りられます。手すりは、要支援1・2と要介護1の方が原則として対象外になる種目に入っていません。ケアプランをもとに借ります。
答え:ベッドの側面に付ける手すりは、特殊寝台の付属品として貸与の対象です。要支援1・2と要介護1の方は原則として対象外ですが、例外の場合があります。ねじで留める場合の扱いは市町村によって違うので、ケアマネジャーにご相談ください。
参考にした情報
- 介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて(老企第34号)(新しいタブで開きます)
- 厚生労働大臣が定める福祉用具貸与及び介護予防福祉用具貸与に係る福祉用具の種目(平成11年厚生省告示第93号)(新しいタブで開きます)
- 要支援・要介護1の者に対する福祉用具貸与について(新しいタブで開きます)
- 福祉用具・住宅改修(新しいタブで開きます)
- どんなサービスがあるの? – 福祉用具貸与(新しいタブで開きます)
- どんなサービスがあるの? – 特定福祉用具販売(新しいタブで開きます)
- 介護保険における住宅改修(新しいタブで開きます)
- 過去の事例から確認された住宅改修の注意事項(令和7年3月)(新しいタブで開きます)
- 介護保険住宅改修費支給申請の手引き(令和4年12月改定)(新しいタブで開きます)
- 介護保険の住宅改修費支給申請について(令和7年7月)(新しいタブで開きます)